春風亭かけ橋「嶋鵆沖白浪」連続口演「三日月小僧庄吉」「怪僧玄若坊」

配信で春風亭かけ橋「嶋鵆沖白浪」連続口演第2回を観ました。
第3話「三日月小僧庄吉」
倉田屋文吉の紹介で金太郎のところに身を寄せた喜三郎は三社祭の祭礼を見物に出かけた。人通りの多いところで、小さな小僧がぶつかってきた。喜三郎はその小僧を取り押さえる。巾着切りだった。周囲がざわつくので、「足を踏まれた」ことにして、騒ぎを収める。そして、その小僧を料理屋に連れて行き、話を聞く。「まずは紙入れを返してもらおうか」。
小僧は十五歳だという。身体は小さいが度胸がある。話を聞くと、両国浅草辺りを縄張りにしている巾着切りで、子分が30人いるという。それも皆、自分よりも年上の大人だ。三日月小僧庄吉と呼ばれているそうだ。赤坂で八百屋をしている親父は「真面目に働け」と言ってそりが合わなかったが、十歳のときに追い出された。寺の和尚のところに預けられたが、我慢できずに飛び出した。巾着切りをやろうと思い立ち、やってみると天賦の才なのか、うまくいった。
玉垣嶽之助という関取が立派な小柄を持っていて、両国の巾着切りの連中が「あれを盗むことが出来たやつを親分にしよう」という話になった。庄吉は果敢に挑んだが、玉垣に取り押さえられた。「この小柄がほしいのか?くれてやる!」と言って、庄吉の手をその小柄で突き刺した。庄吉は痛いのを我慢して手を引き、その隙に小柄を手に入れて、川へ飛び込んで逃げてしまった。まんまと小柄を手に入れたのだ。そのときの傷が三日月の形をしているところから、三日月小僧と渾名がついた。そして、庄吉は両国の巾着切り仲間の親分になった。後日、小塚は玉垣のところに返しに行って事情を話すと褒美に10両くれたという。
喜三郎はその話を聞いて、庄吉に巾着切りをやめて博奕打ちにならなって人の役に立つような男にならないかと誘う。どうせ堅気としては歩めない、畳の上では往生できない身なんだからと言って、土浦の皆次親分を紹介しようとする。すると庄吉は「親方の身内になりたい」と言う。そこで喜三郎は自分の素性を明かす。「あの喜三郎さんですか?」。
庄吉は驚いた。あの仁三郎を斬った喜三郎だと知り、そのきっかけを作ったのは自分だと言う。成田でお虎の5両入った紙入れを盗ったのは自分なのだと。そして、「これも何かの縁。お願いします」。喜三郎と庄吉は親分子分固めの盃を交わす。そして、喜三郎は30両を渡し、これで両国の巾着切り仲間に振舞って博奕打ちになると別れを告げるようにと言う。庄吉は赤坂にいる親父に手紙を書いてくれと頼む。久しぶりに会って、金を渡し、孝行の真似事をしたいというのだ。
喜三郎に「浅草の金太郎親分を訪ねて来い」と言わた庄吉は赤坂の親父を訪ねて「人様の迷惑だけはかけるんじゃないぞ」と言われて、別れを告げた。そして両国の巾着切り仲間と最後の酒盛りをしていると、お上に見つかってしまった。「御用だ!」。あえなく捕まり、佃の寄せ場送りになる。だが、喜三郎に「心変わりをした」と誤解されるのは心残りだ。「島抜けをしよう」。肥溜めに潜って外に出て、海に飛び込んで立ち泳ぎで岸に辿り着き、通りかかった子どもの身ぐるみ剥いで、その着物を着て逃げる。
だが、永代橋のところで饗庭重右衛門という同心に出くわしてしまい、三日月小僧庄吉が佃を島抜けしたという情報を得ていたために、あえなくお縄となり、三宅島に遠島ということになってしまった。
第4話「怪僧玄若坊」
湯島の根生院の住職、善念は生臭坊主で、料理屋の桜屋のお花を気に入り通っていたが、お花の父の提案でお花が寺に通うことになった。本郷の三森安次郎が開く博奕場で遊んだ帰りの手塚の太吉は根生院を訪ねる女の姿を見つける。「あれはお花坊じゃないか。ここの坊主は若い女を引っ張りこんでいるな」と踏んで、庫裏の雨戸を開け、二人の寝間を襲う。「出るところに出るぞ」と強請ると、10両を渡される。「これはもう一押しするともっと出るかも…」と思い、百両を要求した。
善念が困っていると、納所坊主の玄若がやって来た。「和尚様、自業自得でございます。ここは私が丸く収めます」。玄若は太吉を別室に案内し、金額の交渉かと思いきや、玄若は強気に出る。出るところに出る?どこの奉行所だ?南町奉行?こっちには寺社奉行がついている。町奉行はせいぜい二、三千石。それに比べて寺社奉行は十万石。こっちが「そんな事実はございません」と言えば、寺社奉行の言い分が通るのだ。無断で寺に侵入したお前さんを訴えれば、良くて寄せ場送り、悪くすると島流しになるぞ。
圧倒された太吉は「見なかったことにして、帰ってやる」と言うと、意外にも玄若は「強請りに来たのではないのですか?」と訊く。てめえは素人か。出しいいように少しずつ金を取りにくればいいんだ。いい得意先ができたと思って、月に一、二度来ればいい。きょうのところは五両渡そう。すっかり玄若のペースに飲まれている太吉が可笑しい。
玄若は和尚のところに行き、「相手はどうにも動かない。きょうのところは50両に負けてやるということになりました。身から出た錆。高い薬ではないかと」。玄若は太吉に5両を渡し、残り45両を自分の懐に入れる。そして、しばしば太吉が無心に訪れると、和尚から5両貰い、そのうちの1両を太吉に渡すという悪い納所坊主である。
年末に無心にやって来た太吉をねぎま鍋で一杯やらないかと誘い、泥酔した太吉の口元に濡れた半紙を置き、細引きで首を絞め上げ、殺してしまった。和尚には「口論の末、殺めた」と話し、迷惑がかからぬよう坊主をやめて商売を始めるので、百両欲しいと願い出る。
そして、死骸は不忍池に放り込もうと俵に詰め込み、荒縄で縛り、裏庭に生えている孟宗竹を天秤棒代わりにして運び出す。だが、途中で半鐘が鳴り、吉原が火事だと大騒ぎになったため、二人は死骸を放りだして寺へ戻ってしまった。だが、後日に太吉の死骸が発見され、その場にあった孟宗竹を手掛かりに、根生院に嫌疑が掛かる。お縄となった和尚の善念は体が弱っていたために逝去、玄若はすべての罪を和尚にかぶせ、決して口を割らない。結果、三宅島に遠島となった。