新春若手寄席
池袋演芸場の新春若手寄席に行きました。
「洒落番頭」春雨や晴太/「堀の内」春風亭㐂いち/漫才 しらすのこうげき!/「あくび指南」立川談洲/「権兵衛狸」柳家小はだ/漫才 シンクロニシティ/「仁礼半九郎 カナリアと軍人」田辺いちか/中入り/漫才 スクールゾーン/「普段の袴」三遊亭好二郎/「駆け込み寺」春風亭一花/漫才 まんじゅう大帝国/「宿屋の仇討」橘家文吾
談洲さんの「あくび指南」、切り口が斬新で面白い。師匠のお手本と大胆に違う八五郎。「けだるい」雰囲気で台詞を言えと教わっているのに、なぜか「威勢良く」江戸っ子口調になってしまう。「おい、船頭さん」の出だしから出来ないで、「ヨォ!」になっちゃうのが滅茶苦茶可笑しい。「舟へ上手にやっておくれ」が「やっつくれ」になっちゃう。何度直されてもなっちゃう。面白い!
いちかさんの「カナリアと軍人」。薩摩隼人で女嫌いで通っていた仁礼半九郎が、愛玩していたカナリアが隣家の長谷部家に迷いこみ、それをきっかけに市ヶ谷小町と呼ばれた深窓の令嬢、由起子さんに一目惚れして、恋煩いになってしまうのが人間的で素敵だ。
大隊長の岡本少佐が仲介し、長谷部家に「妻として迎える」ことを打診した結果をドキドキしながら聞く半九郎が可愛い。由起子さんの答えは「こちらから望んででも、嫁に行きたい」。天にも昇る気持ちだったろう。だが、この縁談も半九郎の上司である西郷隆盛が下野、薩摩に下ることによって破談となってしまう…。いつも、この続きが聴きたいと思うのであった。
一花さんの「駆け込み寺」は十八番だ。夫婦喧嘩は犬も食わない。仲の良い夫婦ほど喧嘩するとよく言うが、この噺の八五郎とお崎はまさにそうだ。「惚れて惚れられて、惚れられて惚れて」という間柄。だからこそ、ちょっとしたことで焼き餅を妬いてしまう。馬久・一花の夫婦を映し出しているようだ。
文吾さんの「宿屋の仇討」。源兵衛、太助、宗助の江戸っ子三人組の騒がしさが身上の落語を愉しく聴かせてくれた。大坂相撲を思い出し、捨衣が前みつを取って食い下がって勝負が始まる。万事世話九郎の「現在、捨衣が13連勝中である!」と伊八に苦情を言うのが可笑しい。
そして、源兵衛が3年前に「人を二人殺して、300両を奪って、未だに捕まらない」という作り話で盛り上がるのも楽しそう。「源ちゃんは色事師!大悪人は源ちゃん!」と他の二人が囃し立てるが、隣の部屋の自称「三浦忠太夫」が仇討を申し込むと、シュンとしぼんでしまう三人衆が漫画チックで面白い。
漫才は4組出演したが、シンクロニシティとまんじゅう大帝国が好みだった。シンクロニシティの広辞苑ネタは実に良く計算された笑いで感心した。まんじゅう大帝国の「天使の取り分」という言葉の意味のこじつけも、もっともらしくて可笑しい。大リーグのエンゼルスを絡めた大岡裁き風の作りに、思わず信じそうになったよ。やっぱり、漫才は頭脳プレイであり、跳んだり跳ねたりして笑わせるものではない。