【プロフェッショナル 書店店主・岩田徹】運命の一冊、あなたのもとへ(2)

NHK総合テレビの録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 書店店主・岩田徹」を観ました。(2018年4月23日放送)

きのうのつづき

岩田はなぜ、人の心に届く一冊を選び抜くことができるのか。実は、客に書いてもらうカルテと呼ぶアンケートが大きな力を発揮している。

カルテには年齢や家族構成、さらに心に残っている20冊を書いてもらう。だが、それだけではない。これまでの人生で嬉しかったこと、苦しかったこと、上手に歳を取ることができるか、など踏み込んだ質問もある。

1万円選書に応募してくるのは、人生に悩みを抱えている人が多い。そのカルテを書くことで、その悩みと冷静に向き合えるようになるという。

岩田が語る。

全部それぞれの質問に答えていくと、なんとなく自分を客観的に見ることができるっていうか。もう一人の自分が横に立ち上がってくるみたいな感じになるんですよね。

岩田が選んだ本にこめる思い、それは「本は、人生の味方」。

暗い本はなるべく薦めないんですよ。明るく終わる本でないと。たとえ今が非常に調子が悪いっていうか、つらい状況であるとしても、明日になったら何が起こるか分からないと、プラスに思っていないと、人生はつまらない。本の中に何がある。本の中には作家の人生があるからね。いろんな人の人生を学びながら、こっちの人生を組み立てていくわけじゃないですか。

岩田の本は時に人生を変える。2年前、1万円選書を申し込んだ田中里彩さん(25)。田中さんは幼い頃から常に本と歩んできた。

田中さんのカルテにこう書かれていた。

これまでの人生で嬉しかったことは、高校生のときに和太鼓の演奏に打ちこめたことでした。そして耳の不調が原因でその和太鼓の演奏を諦めなければならなくなった時ほど苦しいことはありませんでした。もう何もできないかのような無力感がつきまとって、今は何をしてもエネルギーが体中にいきわたらない感覚が続いています。

高校時代に患った突発性難聴で、和太鼓奏者の道を諦めた田中さんに岩田が送った一冊は、哲学の真髄に迫る「イモータル」。主人公の兄の遺品から見つかった本が時空を超え、世界を超えるという物語だ。

田中さんが言う。

時も越えて、国境も越えて、人種も越えて、最後それが(読者である)私のところに辿り着くって、すごいなと思って。それこそ乗り越えて、何かを残していくことは、苦しい中でもできるし、そういう意味で、私自身も励ましてもらえたなって思います。

田中さんはこの本をきっかけに、再び太鼓を始めた。さらに本屋になりたいという新たな夢を見つけた。

生き方そのものを私はどんどん見直していって、いい方向に、いい方向に人生を変えていってみよう。それも(岩田に)背中を押してもらえたなっていうふうに思います。

田中さんが岩田に宛てた手紙にこうある。

本を読む、この楽しさが昔も今も変わらずあるなら、そこそこいい人生じゃないかと。いつか本屋さんのように本を届ける人になりたいと思いながら、今は素敵な本との出会いを楽しんでいこうと考えています。

つづく