【吉例顔見世大歌舞伎】「花競忠臣顔見勢」歌舞伎界の未来を担う若手たちによる、超高速忠臣蔵外伝!

歌舞伎座で「吉例顔見世大歌舞伎」第3部を観ました。(2021・11・25)

「花競忠臣顔見勢」(はなくらべぎしのかおみせ)は、四十七刻(約4日)を一刻(2時間)で観る超高速忠臣蔵外伝である。

プログラムに猿之助が書いている。

顔見世ということで、これからの歌舞伎界を、間違いなく動かしてゆく、いや、ゆかねばならない若手俳優たちに存分に活躍してもらおうと、今回、幸四郎兄と想いをひとつに、「忠臣蔵」の上演を企画いたしました。

最近、舞台に掛けられる機会の少なくなった、「忠臣蔵外伝」ともいうべき場面を繋ぎ合わせ、討ち入りまでをご覧いただこうという趣向でございます。

「赤垣源蔵徳利の別れ」や「大高源吾」など講談でおなじみの要素がふんだんに盛り込まれていたが、一番に印象に残ったのは、「南部坂雪の別れ」が描かれた序幕第四場「芸州候下屋敷の場」と第五場「同 門外の場」である。

高師直に刃傷に及んで切腹を命じられた塩冶判官の奥方の顔世御前は、夫の死後、楽食して葉泉院と名乗り、実家の芸州候下屋敷で亡き夫の菩提を弔いながら暮らしている。

そんな葉泉院の許を大星由良之助が訪れる。身近に仕える戸田の局と共に出迎えた葉泉院は、近い将来、由良之助が高師直を討つと告げに来たのであろうと推量している。しかし、その様子を侍女のお梅が窺っているのに気づいた由良之助は、江戸見物も済ませ、都へ戻るための暇乞いに来たと語り、亡君の仇討ちは諦め、町人になると告げる。

その言葉を聞いた戸田の局は、師直を討ち損じた亡君の無念を思えば悔しいだろうと言って翻意を促すが、今の憂き目は亡君の短慮が原因であり、命が惜しいと語る由良之助。これを聞いた葉泉院は、亡夫の位牌で由良之助を打擲して仏間に籠ってしまう。

続いて戸田の局が座を立とうとするのを引き留めた由良之助は、持参した一巻を戸田の局に託して屋敷を去るのであった。

屋敷の門を出た由良之助が出くわしたのは高家に仕える清水大学。大学は由良之助び高家への討ち入りの心があるか否かを確かめにやって来たのだ。それ故、わざと由良之助に突き当たり難癖をつける。そして、由良之助に仇討ちの心がないと分かると、由良之助を足蹴にして去って行く。

折からそこへ戸田の局、続いて葉泉院が門内から現れ、由良之助に詫びる。というのも、由良之助が戸田の局に預けた一巻は、仇討ちを志す塩冶浪士四十七士の連判状だった。これを見た葉泉院たちは、由良之助の本心を知って詫びたのである。

と、ここへお梅が現れて一巻を奪おうとする。最前、様子を窺うお梅が高家の間者であると推量した由良之助は、本心を明かさずにいたのだ。

戸田の局がお梅に当身をくらわすところへ、寺岡平右衛門が迎えに現れると、葉泉院や戸田の局と名残を惜しみながら、由良之助はその場を去って行く。

高師直/戸田の局/河雲松柳亭:市川猿之助 桃井若狭之助/清水大学:松本幸四郎 塩冶判官/槌谷主税:中村隼人 顔世御前(葉泉院)/大鷲文吾:尾上右近 足利直義/大鷲文吾妹お園:坂東新悟 本蔵娘小浪:中村米吉 赤垣源蔵:中村福之助 源蔵姉おさみ:市川笑也 龍田新左衛門:大谷廣太郎 大星由良之助:中村歌昇 晋其角:市川猿弥 大星力弥:中村鷹之資