【プロフェッショナル 動物写真家・岩合光昭】猫を知れば、世界が変わる(1)
NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 動物写真家・岩合光昭」を観ました。(2017年5月29日放送)
今も猫ブームと言われている。放送当時も、経済効果2億円と謳っているが、そのブームの一端を担っているのが動物写真家の岩合光昭さんだろう。BSプレミアムの人気番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」で、世界40か国の猫を撮影して、人気番組となり、その展示会には多くの猫好きが集まる。猫以外にも多くの野生動物を撮影して世界を驚かせてきた岩合さんだが、今や「ネコと言えば岩合さん」と呼ばれるようになった。その岩合さんの現在を記録し、過去に迫ったドキュメンタリーとして大変に勉強になった。5回にわたって記録を残したい。(以下、敬称略)
2月の京都。岩合は日の出とともに神社を訪れていた。間もなくネコたちが活動をはじめる目覚めの時間だ。通い続けて1年、境内には14匹のネコが棲みついているという。「ゲンクロウ!」「トニー!」「ツキ!」。まず始めたのは、撮影ではなく、ネコへの挨拶だ。
人に話しかけるようにネコに話しかける。カメラを低くして、ネコの視線に合わせていく。ネコたちは岩合の前で自然な仕草を見せ始めた。プロカメラマンとしてネコを撮り続けて40年。一つの流儀がある。「ネコに叱られない」。
岩合が語る。
ネコを撮影する上で最も大切なことはネコに𠮟られないことだと僕は思っています。目線を上からこう見下ろすようにネコを見てしまうと、、単に可愛いって言ってしまうんですけど、可愛いという言葉はこちらが目上になっていることだと思います。やっぱりイコールに僕は最終的になりたいので。
この日の撮影は週刊誌からの依頼。掲載される写真は3枚だが、岩合の撮影は昼になっても終わらない。ネコたちを追いかけ、ときに地面を這いつくばる。岩合が狙うのは、誰にも束縛されない気ままなネコの一瞬だ。
「どうしてネコを撮るんですか?」というディレクターの質問に岩合が答える。
そこにネコがいるからです。山みたいな話ですね。紐に結ばれていないから、すごく自由度が高い。そもそもってのは、やっぱり美しいからかなあ。
岩合の撮影を観察すると、不思議に思うことがあった。ネコの行動を予測できるのだ。長年の経験でネコのちょっとした仕草から次の動きを読めるようになったという。
次に何をするんだろうなと思う時は、自分のことを考えて、自分だったらこういう風にやるよね。ご飯食べたあとだから、喉が渇くのかなっていうの。それが当てはまったりすると、ほくそ笑んだりします。
それでも決定的な写真は滅多に撮れるものではない。
岩合が言う。
満足のいく写真、気に入る写真というのは、なかなかできないですけど、特に「ネコ様」は機嫌しだいです、本当に。ネコ様・・・やっぱり相手を尊敬しなきゃ、敬愛しないと常にいけないんじゃないかと思って、ネコに気に入られれば「これはいいカットだ。これはいいショットだ」ってつながると思うんですよね。
9時間が経った午後3時過ぎ、こっそり食べ物(お供えの節分の豆)にありつく思わぬ行動にネコが出た。その姿もまた魅力だ。
つづく