東家三楽「源太時雨」大人の恋は、苦く、切ない。お芳と源太郎の本当の気持ちは・・・。

木馬亭で「日本浪曲協会6月定席二日目」を観ました。(2021・06・02)

「源太時雨」、大人の恋を東家三楽師匠がたっぷりと聴かせてくれた。曲師は伊丹秀敏。

まず、鳥追い姿の女・お芳が艶っぽいではないか。甲州上野原の居酒屋で飲みっぷりよく酒をあおるが、勘定が足りないとなると、竹本小芳という名の女義太夫の芸で支払うと切り出すところが女だてらにカッコイイ。

それを奥で聞いていた歳の頃、28、9の苦み走ったいい男、源太郎。その芸を買おうじゃねえか、と座敷で聞く。この源太もカッコイイ。

そこから物語が始まる。実は源太はお芳にモノを頼みたかったのだ。10両やるから、一芝居打ってほしいとの相談だ。この芝居というのが、またカッコイイ。

源太郎の親分、信楽屋徳兵衛は相撲上りの久右衛門に喧嘩をふっかけられ、困っている。この久右衛門を討ったら、徳兵衛の娘・お富士の婿にして跡目を継がせてやるという。

で、源太は強いから、この相撲上りを叩き斬ってしまった。約束通り、祝言となるわけだが、別に源太はお富士と一緒になりたくて仇討したわけではない。親分への忠義だ。そして、娘・お富士にいい仲の男が仲間にいる。喜助だ。

だから、この祝言に暴れ込んできて、壊してほしいと、お芳に頼むのだ。

筋書きはこうだ。

源太が6年前に江戸へ剣術の修行に出ていたときに、お芳と出会い、夫婦になった。ところが、源太はちょっと国へ帰って、すぐ戻ると行ったきり、戻ってこない。ようやく探し当てて、今この祝言の場に現れたという筋だ。

お芳は前金5両を受け取る。

祝言当日。なかなか現れないお芳にやきもきする源太。酒をあおって酔っ払っていたのだ。だが、三々九度の盃のところで、お芳は現れた。

「わたしが源太の女房だよ!待っても、待っても、なしのつぶてと思ったら、このありさまかい!我慢ならない!悔しい!」。涙ながらの名演技だ。

源太は徳兵衛に事情を話し、許しを請う。

「喜助!お富士!幸せになれよ!」。

源太とお芳は外に出る。お芳は心の底で「これが本当だったらいいのに」と思う。しかし、源太は意に介さない。「お前は足手まといだ。あばよ!」。後金の5両を渡して、プイッと一人で歩いて行ってしまう。それを追う、お芳。「待っておくれよー」。

ああ、大人の恋は苦く、切ない。