【カラやぶりの会】玉川奈みほ「陸奥間違い」沢村まみ「赤垣源蔵 徳利の別れ」チャレンジ精神に学ぶ浪曲の魅力。
東田端ふれあい館で「カラやぶりの会」を観ました。(2020・12・17)
浪曲師・玉川奈みほと、曲師・沢村まみの勉強会の3回目である。奈みほは奈々福師匠の弟子、まみは豊子師匠の弟子ではあるが、この勉強会を影で支えているのは今や浪曲界全体のスポークスマンも兼ねているといってよいであろう、玉川奈々福大先生のボランティアである。
「陸奥間違い」浪曲師:玉川奈みほ 曲師:玉川奈々福
奈みほは今回、なんと!「陸奥間違い」に挑戦した。前回は「鹿島の棒祭り」だったから、随分と気合いの入ったネタへの挑戦である。相三味線は師匠・奈々福。僕は素人だから専門的なこと、技術的なことはわからないから、勝手なことを書くが、このネタの魅力がしっかりと伝わってくる30分の高座であった。
粗忽な使用人の間違いが間違いを呼んで、事態がどんどん大きくなっていく様子の滑稽。身分が違うからと言って威張らず、逆にそれほどまでに見込まれたとして、人情を施す伊達家、72万石の大名松平陸奥守。機転を利かす知恵伊豆や「そうせえぇ」の将軍・家綱まで含め、みんながハッピーになる「おめでたい話」を、「よかった!よかった!」と、奈みほさんが唸り終えたあとに拍手できた。
「赤垣源蔵 徳利の別れ」浪曲師:玉川奈々福 曲師:沢村まみ
まみも負けていない。奈々福さんに義士伝をお願いした。で、「赤垣源蔵 徳利の別れ」。奈々福さんの「徳利の別れ」は何度も豊子師匠の糸で聴いているが、僕が素人だから書けるのだが、「まみさんでもいける」と思ってしまったくらいである。それは失礼極まりないことだろうし、豊子師匠とまみでは雲泥の差があるくらいはわかっている。
だけれど、僕はこの「徳利の別れ」で、半分は奈々福、半分はまみを見ていたのだが、そのまみの奈々福の横顔、(これは息を見ているのであろう)を見つめる瞳の真剣さに心打たれたのである。三味線だけでなく、掛け声もタイミング良くかけることができていたのではないか。いやいや、まだまだダメなところだらけですよ、と奈々福先生はおっしゃるだろうけれども。素人目にはその真剣さが伝われば十分である。
最後の奈々福先生の寸評。奈みほは、力み過ぎ。だから、体力がもたなくなってしまう。うなることだけでなく、所作も大事。扇子の持ち方など、粗雑。丁寧に。声は出ている。落ち着いて、間合いをとることを覚えなさい。どうしても女流は細くて高い声になってしまうが、ズン!と腹に落として声を出す。殿様や将軍が出てくる話だから、なおさら。
まみは、まだ手でリズムを取っている。肚で取れるようにならなきゃいけない。だから早くなったり、遅くなったりしてしまう。手を弾くことよりも、(浪曲師の)呼吸に合わせることを優先させなさい。
なるほど。公開稽古なので、お客にもわかりやすい表現でアドバイスしている奈々福さんに畏れいる。実際の稽古では、もっと専門的なアドバイスをして細かく指導されているのでしょう。だけれど、奈々福さんのアドバイスを聞くことで、僕のような素人の浪曲ファンにも、浪曲の大切なこと、聴きどころ、どこに注意して聴くと良いのかがわかってくる。ありがたいことです。