一花繚乱 春風亭一花「猫忠」、そして弁財亭和泉の“新”新作びゅーびゅー「という」

「一花繚乱~春風亭一花独演会」に行きました。「宿屋の仇討」と「猫忠」の二席。開口一番は春風亭らいちさんで「牛ほめ」、ゲストは柳家三三師匠で「素人鰻」だった。
「宿屋の仇討」。江戸っ子三人組の性懲りもなく騒いでしまうところが愉しい噺だが、源兵衛が三浦忠太夫奥方に惚れられた嘘の話で盛り上がる前に、相撲を取る件がなかったのは残念。後日、一花さんに伺ったところ、「寄席のトリの尺に収める」ため、割愛して演じたとのことでした。頑張って!
「猫忠」。次郎兵衛と六兵衛が「常兄ぃがお師匠さんの家でいちゃついている」様子を発見し、腹立ちまぎれに常吉の女房に知らせて悋気を炊きつけようと乗り込むところ。常吉が具合が悪くて奥で寝ていると聞いて、ビックリ。さらに常吉が現れて、「双子がいるのか、はたまた抜け穴があるのか」と戸惑うところ。狐につままれた感じが面白い。
さらに、常吉が「それは狐狸妖怪の仕業に違いない。俺を見に行く」と、お師匠さんの家に次郎さん六さんと一緒に行くところ。次郎さんが節穴から中を覗くと、確かに常吉がお師匠さんとやったりとったりしている。でも、覗くのをやめると、横には常吉がいる。何度繰り返しても同じ。瞬間移動?この滑稽がとても良い。
そして、お師匠さんの家に上がり、お酌の返杯をするときに偽物の常吉の耳を触るとピョコピョコ!と動いた。本物の常吉が現れて馬乗りになって取り押さえたところで、「申し上げます」と鳴物入りで偽物が物語る。「親猫が殺され、尋ねついたのが、その三味線」。一花さん、歌舞伎の「義経千本桜 狐忠信」のパロディとして芝居台詞がしっかりした演じ方で堂々としている。三味線、太鼓のほか、笛もわざわざ柳亭市若さんに来てもらっていた。一花さんの勉強熱心に感心しきりの高座だった。
「弁財亭和泉の“新”新作びゅーびゅー」に行きました。「お久しぶりね」「という」「東京―新大阪」の三席。
「という」は林家彦いち師匠の作品。ベースは忠実に彦いちリスペクトしながら、尚且つ巧みに自分のカラーに染め上げ、“和泉の噺”に仕上げているのが素晴らしい。喬太郎作品、白鳥作品も手掛けている和泉師匠だが、これらも全て和泉カラーになっているところに、彼女の手腕を見る。
噺の最終盤。北区赤羽にあるアパートの201号室で、一人の男が壁に貼られたポスター、水着姿でビールジョッキを持って浜辺に立っている女性に話しかけるかのように、「皆の中に俺がいる。俺は独りじゃないんだ」と独り言をつぶやきながら酒を飲んでいる情景に哀愁を感じ、涙を誘われた。
噺の前半、実家に里帰りした姉が妹と一緒に「昔、父親と作り話をして遊んだ」といってその遊びに興じる部分は思い切り笑えるようにしているため、なおさら最終盤が効果的になる。「父親はKGBの諜報員だった」とか、「お父さんが交通事故に遭ったと携帯に連絡があった」とか。あくまで「よく考えたら、そんなわけないだろう!」という話に限り、嘘は駄目というルールだったという…。和泉師匠が他の噺家の作品を演じて素晴らしいのは、その作品の持つ魅力は勿論だが、それをよく咀嚼して自分の言葉で語る彼女の話芸の力も多分にあると思った。

