【大相撲名古屋場所】安青錦が3場所ぶり3回目の優勝、来場所に大関復帰へ

大相撲名古屋場所千秋楽、関脇の安青錦が優勝決定巴戦の末、3場所ぶり3回目の優勝を飾るとともに、来場所の大関復帰を決めた。

二敗で優勝争いの単独トップに立っていた安青錦が本割では三敗で追っていた関脇・熱海富士の一気の寄りに敗れ、同じく三敗だった大関・霧島も琴櫻を退けたため、三者が並んでの決定戦となった。第一戦は熱海富士が霧島を圧倒、次の安青錦を撃破すれば、三度目の優勝決定戦進出で悲願の初優勝となるところだった。だが、安青錦は本割での敗戦から立て直し、左前廻しをしっかりと掴んで出し投げ気味に熱海富士を寄り切る。続く霧島戦でも同様に左前廻しを取って外掛けで霧島を崩して土俵の外においやり、優勝を決めた。

安青錦は先場所、左足首の怪我のために全休し、関脇に陥落。今場所に二桁以上の勝ち星を挙げて大関に復帰することが期待された。四日目に義ノ富士に苦杯を舐めるも、十一日目で十番勝ち、大関復帰は難無くクリア。その後も優勝争いのトップに立ち続け、賜杯を抱いた。昭和44年に大関復帰の特例制度が定められて以降、7人の力士が二桁勝利で復帰を果たしているが、優勝で飾ったのは安青錦が初めてである。

師匠の安治川親方によれば、場所後半は「とても土俵に上がれるような状態ではなかった」そうだ。負傷していた左足首が完治しないままであった上に、場所中に左足親指を痛めてしまい、まさに満身創痍で土俵を勤めていたわけだ。だが、安青錦は出場するからには「(大関復帰の)二桁で満足せず、優勝を目指す」と心に決めていた。特に優勝決定巴戦の二番は精神力の勝利だったといえるだろう。感動的である。

熱海富士は惜しかった。幕内最重量の巨体を生かし、四つに組んで前に出る相撲が今場所は以前より一回り大きく見えた。特に九日目からの7連勝はその賜物であり、霧島にこそ敗れたが、横綱の豊昇龍、大の里、大関の琴櫻を破った相撲はどちらが番付上位なのか?と思わせる堂々たる取り口であった。今場所で大関昇進への起点を作ったことは確かで、来場所の成績次第では年内の昇進もあり得るのではないか。まさに大器が目を覚ましたわけで、楽しみである。

霧島は今場所に「ハイレベルな優勝であれば、横綱も」という期待があった。だが、五日目の平戸海、九日目に美ノ海と平幕に負け、十三日目に安青錦に敗れた時点で、その夢はついえた。しかし、来場所以降に期待が繋がる実力を示したことは確かだ。安青錦と並んで、横綱獲りを競ってほしい。

土俵を盛り上げた平幕力士も忘れてはならない。琴栄峰は先場所の10勝に続き、11勝で初の敢闘賞を受賞した。右四つから前に出る相撲のパワーが増して、逞しくなった。もはや、兄の琴勝峰に負けず劣らずの存在になりつつある。来場所は三役総当たりとなる番付にあがるから、真価が問われる。期待したい。

前頭筆頭の藤ノ川が千秋楽に勝ち越しを決め、殊勲賞を受賞。念願の三役の地位を掴むことになりそうだ。毎場所言っているが、あのキビキビした相撲は観客を沸かせ、今場所は豊昇龍と大の里から金星を掴む実績もあげた。体は小さいが、それをハンディとせず、両差しになって相手力士を吊り上げる度胸の良さに痺れる。益々の活躍、期待大だ。

幕内下位では、獅司、藤凌駕、尊富士が目立った。獅司は恵まれた体格を生かして前へ出る積極的な取り口が好印象を与え、藤凌駕は先場所に続く二桁で存在感を示し、尊富士は新入幕初優勝の頃を彷彿させる速攻の直進相撲が気持ち良かった。三力士とも千秋楽に勝てば敢闘賞だっただけに、その悔しさをバネに来場所も活躍してほしい。

両横綱については、来場所に復活を期待するとしか言いようがない。豊昇龍は7勝6敗で迎えた十四日目に休場し、霧島を不戦勝にしてしまった責任は大きい。先場所に負傷した右太腿が完治していなかったという理由での休場だが、相撲内容は相変わらず運動神経に頼る取り口が目立った。豊昇龍らしい横綱としての意地が裏目に出てしまうことを危惧する。焦らず、負傷の完治を待ちたい。

大の里はフル出場して、9勝6敗。序盤戦は横綱らしからぬ自信のなさが土俵から滲み出ていたが、2場所連続休場明けゆえ、相撲勘が鈍っていたこともあるだろう。後半、徐々に本来の大の里らしいパワー相撲が復活してきたようにも思えたが、安青錦、霧島、熱海富士と優勝を争った三力士には敗れている。左肩の怪我が完治していないのだろうか。豊昇龍同様、横綱の威信をかけて、来場所以降の土俵にあがってほしい。

琴櫻の8勝7敗については、もはや何も言うことはない。相変わらず消極的な相撲が目立ち、大関としての貫禄が見られない。このままずっと、ハチナナ大関を続けるのか。霧島や安青錦に刺激を受けて、大きく変貌することはあるのだろうか。

先場所優勝した若隆景が心配だ。場所前に神経麻痺などを起こすコンパートメント症候群の緊急手術を受け、全休した。手術が遅れた場合、左脚切断の可能性もあったという。8月の巡業、9月の秋場所も全休の見通しだ。何度も困難を克服してきた不屈の人である。無理をせず、体調が万全になってから復帰することを望みたい。

十両筆頭の朝翠龍が11勝4敗で、来場所に新入幕が確実だ。兄の朝紅龍との兄弟幕内力士が誕生するわけで、兄弟揃って小さな体で小気味良い相撲を見せて土俵を沸かせてくれることを期待したい。

幕下11枚目の旭富士が幕下優勝した。序の口から4場所連続各段優勝で、この記録は羽黒山以来というからとんでもない大器だ。今場所、生田目に初土俵以来の連勝記録を25でストップされたが、生田目が十三日目に錦木に敗れたために、6勝1敗の7人による優勝決定戦となった。旭富士は生田目に見事雪辱を果たし、優勝をもぎとった。来場所は幕下5枚目以内に昇進するであろう。その取り口はすでに幕内力士に負けない強さと巧さを兼ね備えており、さすが元横綱で前の伊勢ヶ浜親方の四股名をもらったことだけのことはある。末恐ろしい逸材は、この先どんな活躍を見せてくれるのか。楽しみである。