こっそり佑輔 古今亭佑輔「幾代餅」、そして月刊少年ワサビ 柳家わさび「鹿政談」

「こっそり佑輔~古今亭佑輔勉強会」に行きました。「茶の湯」(ネタおろし)「あくび指南」「幾代餅」の三席。
「幾代餅」。錦絵を見て幾代太夫に恋煩いしてしまった搗米屋六右衛門の職人清蔵の純情。念願かなって枕を交わした翌朝、幾代に「今度はいつ来てくんなます」と問われ、嘘をつき通すことができなかった清蔵の人柄にかえって幾代が惚れてしまうのだから、人間は正直に生きなきゃいけないと思う。
野田の醤油問屋の若旦那なんかじゃない、もう一年働き詰めに働いて十五両を工面しないと花魁には会えない、だから一年後に会ってくれませんか。こう真実を語る清蔵の姿に幾代太夫は心を動かされたのだ。
来年三月に年季が明ける、そのときに「あちきのような者でも、おかみさんにしてくんなますか」。香箱の蓋と五十両を渡して、「もう二度とこの里に足を踏み入れてはなりんせん」。
佑輔さんは「あくび指南」でみせたような江戸っ子、それも男性を演じるのが実に巧い。女流落語家であることを忘れさせる気っ風の良い江戸弁に魅力がある。だが、やはり女性である。幾代太夫を演じるところは全盛を誇る花魁を思わせる色香が匂い立つ。兎角女性は男性中心に古典落語の世界を描くのに不利であるようなことを言われるが、少なくとも佑輔さんにおいてそれは寧ろ有利に働いている。この男女の演じ分けの冴えを今後も生かした高座に期待したい。
「月刊少年ワサビ~柳家わさび勉強会」に行きました。「ぞろぞろ」「見て見て~」「鹿政談」の三席。
三題噺「見て見て~」のお題は「妖刀村正」、「水族館」、「再放送」。おばあちゃんが孫娘の行動について隠居さん(?)に疑問をぶつける導入が可笑しい。「推し」の「ユーチューブ」は「アーカイブ」がないから「罪深い」とはどういう意味なのか。イマドキの用語をわかりやすく、おばあちゃんに解説してあげるのが良い。アーカイブは多少意味が違うがテレビの再放送のようなもの。ただ、アーカイブは生配信してから数週間しか視聴できないが、再放送は10年後くらいに放送されたりして、「世代を超えて共通の話題になる」と特徴づけたことが、サゲにつながるのは、流石。
弟が孫娘の推しのユーチューブを観るのを邪魔するから、おばあちゃんが弟の気を引くために水族館に連れて行ってはどうかと提案され、家の中で水族館のような体験ができるように、アクリルパネル越しにパフォーマンスを繰り広げるおばあちゃんの姿も面白い。
唐突だなと思ったのは、そこに孫娘の両親、つまりはおばあちゃんの息子夫婦が浮気騒動で緊急家族会議を開くことになったところ。どうやらケンジパパが妖刀村正に乗っ取られたことに、マユミママが激怒したのだという。最終的にママが浮気疑惑をぶちまけるユーチューブを始めると言い出し、その名も「妻放送(さいほうそう)」という…。前半部分と後半部分の整合性というか、必然性を何かで繋げれば、一席の噺としてきちんと成立するような気がした。
「鹿政談」。善良な豆腐屋、与兵衛を救うだけでなく、悪政を正すヒーローとして奈良町奉行の根岸肥前守が機転を効かせた裁きをするところをしっかりと描いていて良かった。代官の塚原出雲と興福寺住職の了全が結託して、年三千石の鹿の餌料を横領し、市民に高利貸付して私腹を肥やしていることを、肥前守が一刀両断する姿が気持ち良い。
何とか救ってやりたいと思っている肥前守の問いに対し、正直者の与兵衛は何度訊かれても「親三代にわたって奈良の生まれ」で「鹿を殺すと死罪であることも存じていた」と答え、ただ「きらず」(おから)を食べているのが犬だと思って棒で殴って殺してしまったという。だが、それは犬ではなく、鹿だった。正直に答える与兵衛に対し、肥前守は鹿の死体を見て「これは犬だ」と言いくるめて、塚原や了全にも不正な横領の罪を裁くことをちらつかせて「確かに犬です」と言わせるところ、痛快である。
実際、鹿に餌を十分に与えないから、町の豆腐屋のおからを鹿が貪り食うのだという理屈も成り立つ。正直者は正直を貫けば報われる。悪党は誤魔化そうとしても、見抜かれる。これぞ、勧善懲悪という噺をユーモアを交えながら、わさび師匠がスカッと聴かせてくれた。


