立川談洲ツキイチ落語会「卸問屋」、そして伝輔劇場 古今亭伝輔「子は鎹」

「ふくらぎ~立川談洲ツキイチ落語会」に行きました。「卸問屋」「水屋の富」「め組の喧嘩」の三席。

「卸問屋」。旦那の孝右衛門は自分が隠居するにあたって、10年前に先立った女房(ばあさん)に会って、息子を含めた後継問題をどうするか、相談したいと番頭に頼む。つまり、一般的に言われる「口寄せ」である。

そして、霊媒師やイタコの類を40人集める。旦那は本当に「ばあさん」が降りてきた人物の言うことを信じるという。その人物には百両を褒美として与える。だが、皆「私がばあさんだ」と主張を始めるので、「ばあさんは誰だ!?」なるオーディション的なものをおこなうというのが、談洲さんらしくて面白いユーモアである。

第一関門として、40人が我こそ「ばあさん」と言い張る状況を見て、本当は霊など降りていないと正直に言って、この競争から抜ける選択肢を作る。すると、8割、つまり32人が脱落。さらに旦那は「ばあさんは腰など曲がっていなかった」と真実を暴露すると、残りは3人に減った。

ここから「ばあさんクイズ」がはじまる。①好物の食べ物は何だったか。Aは鯵の干物、Bは水羊羹、そしてCは米と答える。正解はC。②思い出の場所はどこか。Aは花見をした飛鳥山、Bは一生に一度は行きたい伊勢神宮、Cは花火を見た両国橋と答える。正解はまたしてもC。このようにクイズを繰り返していって、100問。正解数はAが0、Bも0、Cは100問全問正解。

さあ、この「ばあさん」の霊が降りてきたという人物に、旦那は息子に二代目を継がせるかどうかと問いかけるが…果たして。「ばあさんは誰だ!?」クイズという設定から、霊媒師やイタコといったいかがわしい存在に対して、皮肉たっぷりな笑いを生む談洲さんのセンスが光る。

「伝輔劇場~古今亭伝輔独演会」に行きました。「ぞろぞろ」「四段目」「子は鎹」の三席。

「子は鎹」。女房子を追い出して三年。吉原の女も叩き出して「馬鹿なことをした」と気づいた熊五郎に番頭は「酒をやめたのは偉い。酒さえ飲まなければ立派な大工だ」と褒めたときの熊五郎の反応が良い。「こんなものを飲んでいたから、独りぼっちになってしまった。そう思うと怖くて飲めなくなったんです」。一念発起して禁酒したのではなく、自然と酒を遠ざけるようになったというのが素晴らしい。

金坊と再会した熊五郎は元女房が新しい亭主を持たずに、女手ひとつで金坊を育てていると聞いて、「おっかさんは何と言っているのか」と訊く。あの飲んだくれには手を焼いた、でもお父っつぁんを恨んではいけない、あれはお酒が悪いんだ、恨むならお酒を恨みなさい。この言葉を聞いて熊五郎はどんなに嬉しかったことだろう。

「酒をやめて、独りで頑張って働いている」という元父親に、金坊は「寂しくないの?」と訊くが、「大人だから寂しくない」と強気に答えると、金坊は「大人だって寂しいよ。寂しそうな目をしている」。子どもに嘘はつけない。

金坊の額の傷の理由(わけ)の件。田中様の坊ちゃんに独楽を投げられたと知ったとき、母親は最初「父親がいないからと言って馬鹿にして」と言っていたのに、田中様という言葉が金坊の口から出ると「痛いだろうが、我慢をしてね。田中様からはお仕事沢山貰っているから、嫌われると親子が路頭に迷う…こんなとき、あの飲んだくれがいてくれたら…」。このとき、父親熊五郎も息子金坊もお互いに泣いている。良い場面だ。

金坊が帰宅し、父親から貰った小遣いの50銭が母親に見つかった件。誰に貰ったのかと訊かれ、熊五郎との約束を健気に守り、「知らないおじさんに貰った」と言い張る金坊。もしや盗んできたのでは心配になり、「三度のものを二度にしたって不自由させたことはない。どこで盗ったの、一緒に謝ってあげるから」と金槌を持ち出して折檻する母親の気持ちもよくわかる。そして、金坊が「貰ったんだい!お父っつぁんから貰ったんだい!」と言ったときの母親の安堵は計り知れない。ましてや、熊五郎は酒をやめ、吉原の女も叩き出し、一生懸命働いて、綺麗な半纏を何枚も重ね着していたと聞いたとは嬉しかったろう。「あの人も酒さえ、やめてくれれば…」。

そして、翌日の鰻屋の二階。熊五郎は元女房に両手をついて謝る。「すまねえ。この通りだ。女手ひとつで、よくここまで育ててくれた。昨夜、まんじりともできず、考えた。どのツラさげてと言うかもしれないが、お前と俺の二人で金坊を育てた方がいいんじゃないか、と」。これに対し、元女房も喜ぶ。「ありがたい。こっちからお願いすることです。また一緒になれるとは夢にも思っていなかった。どうぞよろしくお願いします」。ハッピーエンドだ。

生真面目な伝輔師匠の人柄が滲む素敵な「子は鎹」だった。