渋谷らくご しゃべっちゃいなよ 立川寸志「師匠ふたたび」柳亭信楽「にぎり寿司」

配信で渋谷らくご「しゃべっちゃいなよ」を観ました。
「柳家Evangelion」柳家さん花/「蜂が飛ぶ」瀧川鯉白/「師匠ふたたび」立川寸志/「正式名称」柳家花飛/「にぎり寿司」柳亭信楽
さん花師匠。古典落語「道灌」をエヴァンゲリオンに寄せて創作した発想は面白い。だけど、僕みたいなエヴァンゲリオンについて一切知識のない人間が聴くとちんぷんかんぷん。そこが喬太郎師匠のウルトラマン落語との違いで、ウルトラマンに対する知識がない人でも楽しめるのは、師匠のウルトラマンへ愛情、熱意が伝わってくるからだ。喬太郎師匠と較べるのは酷かもしれないが。
鯉白さん。最近、鯉白さんの作品「せみがなく」を柳亭信楽さんが演じたのを聴いたが、これに類する噺を創作したかったと冒頭で言っていた。まず、鼻から蜂蜜が出るようになった、それは雄と雌のミツバチ2匹が巣を作っているからだというところの発想のぶっ飛び方についていけなかった。そして、友人と二人でミツバチ2匹も連れて、友人の妻の不倫現場であるラブホテルに乗り込むという展開も僕には理解できなかった。悔しいけれど、僕の脳の柔軟性に限界を感じた。
寸志さん。面白い。サバダンジ師匠が高座の下に潜っていて、演者の落語の寸評や昔の噺家の思い出話をするところにノスタルジーを感じた。弟子のサバノスケが真打になる披露目の大初日に突然、行方不明になったサバダンジ師匠の謎が解明されるのも良い。師弟の約束「高座に穴は空けるな」を師匠が破ってしまって、自分で自分を破門した…これがサバノスケが反対俥を熱演しすぎて高座に穴を空けてしまうというサゲにつながって、ハートウォーミングな作品だと思った。
花飛師匠。他愛のない世間話が、正式名称を使って喋られると全く理解できないという面白さが良い。パンチパーマはチャンピオンプレス、サーティワンアイスクリームはバスキンロビンス。へぇー!博識というか、雑学というか。事前に調べて仕込んだネタがあるにせよ、兎に角、正式名称を貫いた世間話に笑った。
信楽さん。これまた、発想の勝利。中卒で親方の許で20年間修業を積んだ寿司職人のケンちゃんが暖簾分けをした店が寿司屋でなく、眼鏡屋という…。親方の説明によると、「40年間、握り続けてきたが、寿司の限界を感じた」。親方の目標は人の視力を0.1でも上昇させたいということだった!魚は眼に良いとは言うけれど、そりゃあ眼鏡には敵わない。「時代は眼鏡だ」という親方の言葉に、この新作の笑いの芯がある。素晴らしい!