四季の萬会 三遊亭萬橘「軒付け」

「四季の萬会~三遊亭萬橘独演会」に行きました。「大工調べ」と「軒付け」の二席。開口一番は笑福亭ちづ光さんで「たらちね」、二ツ目の三遊亭萬丸さんが「ぞろぞろ」を演じた。

「軒付け」は初めて聴いた。「下手な浄瑠璃を聞くと味噌が腐る」という諺を基に創作された上方落語を、萬橘師匠が独自のアレンジを加えて一席に仕上げている。

義太夫を一カ月習った男が発表会に出て大恥をかき、もう誰も聞いてくれないと隠居に相談に来る。すると、隠居は義太夫の軒付けをして町内を廻っている“連中”と呼ばれる人たちがいるから、そこに加われば聞いてくれる人もいるだろうし、中には家に呼び込んで鰻茶漬けをご馳走してくれる人もあるそうだと教授するが…。

連中の人たちの義太夫も酷くて、「犬の喧嘩のようだ」とか、「山賊が飛び込んできたと思った」と言われる始末。しかも、肝心の三味線がいつもの横井の旦那に用事が出来て来ず、代わりに呼んだ中華そば屋の陳さんが三つの手しか弾けないというお粗末な義太夫の軒付けだ。男が一番楽しみにしていた「鰻茶漬け」などとてもじゃないが期待できない。

それでもめげずに、「菅原伝授手習鑑」や「鎌倉三代記」、「朝顔日記」などをやるが、皆酷い。聞けば、連中の人たちは家族から「家では語りません」と念書を書かされた人間ばかりという…。兎に角、滅茶苦茶で聴くに堪えない義太夫をやり続ける集団のドタバタで笑わせる、萬橘師匠の力量あっての高座だと思った。