徳川天一坊フェス!「天一坊の生い立ち」~「越前登場」

日本講談協会フェス!!第三部「徳川天一坊フェス!」を配信で観ました。

「寛永宮本武蔵伝 玄達と宮内」神田梅之丞/「太平記 楠木の泣き男」神田桜子/「天一坊の生い立ち」神田伯山/「伊予の山中~天中坊日真」神田阿久鯉/「山内伊賀亮荷担」神田愛山/中入り/「伊賀亮と土岐丹後」神田鯉風/「越前登場」神田松鯉

伯山先生。八代将軍吉宗が源六郎時代に懐妊させた沢野は出産するが、母子共に亡くなってしまった。沢野の母、おさん婆さんの手元には、御墨付きの書面と志津三郎兼氏の刀という御落胤の証拠の二品が残っている。源氏坊改行は御落胤が自分と同年同月同日に生れたことを知り、自らが御落胤であると名乗り出ようと十二歳にしておさん婆さんの首を絞め殺害、さらに師匠である感応院も毒殺して、証拠の二品を手に九州へ渡り、加納屋の商人となり、吉兵衛を名乗る。江戸へ出るために300両と証拠二品を携えて船に乗り込むが嵐に遭う。だが、幸運なことに吉兵衛ただ一人が浜に打ち上げられ、助かる。そこには「俺は九代将軍への道が見えている。死んでたまるか」という吉兵衛の執念が色濃く見える。

阿久鯉先生。一夜の宿を求めると、それは赤川大膳と藤井左京という水戸浪士の山賊の隠れ家だった。吉兵衛はこの二人が自分の懐の金を狙っていることを察知し、逆に「自分は将軍の御落胤だ」と証拠を見せて凄む。畏れ慄いた二人に対し、実は…と御落胤に成りすます計略を打ち明け、味方に引き入れる。吉兵衛には赤川と藤井が使える人物だという判断があり、二人も吉兵衛の度胸に「この男についていけば損はない」という計算がお互いにあったのだろう。

さらに計画を強固なものにするために、赤川大膳の伯父で美濃の常楽院という御朱印寺で住職をしている天中坊日真に声を掛ける。日真は「日蓮上人の生まれ変わりだ」と檀家を手玉に取っている悪坊主。吉兵衛を本物の御落胤に見せるために、女巡礼が捨てた子を先代住職が養育した天一という男を殺害し、吉兵衛を天一坊として祀り上げることにする。女巡礼が沢野で、御落胤の証拠二品を持っていたということにすれば信憑性が増すと考えたわけである。

愛山先生。この常楽院に浪人者が訪ねてきた。元九条関白の家臣、山内伊賀亮である。伊賀亮は武芸百般に秀で、有職故実に詳しい。この男を味方にすれば百万力だと天中坊日真は考え、吉宗御落胤の天一坊に奉公する気はないかと誘う。固めの盃となったとき、伊賀亮は天一坊を穴の空くほど見つめ、「小僧、この目が仕官するなと言っている。とんでもないことを企てているな」と見破る。

陰謀露見か?と思われたとき、天一坊は伊賀亮の前に回り両手をついて事情を打ち明ける。すると、伊賀亮は「年は若いが、度胸のある奴だ」と見込み、「その計略は成就するやもしれん。お前の度胸に惚れた」と味方に入ることを快諾する。

鯉風先生。山内伊賀亮の提案でまずは大坂に入り、大坂城代の土岐丹後守に認めさせることにした。長町の宿に天一坊を待機させ、「鷺を烏と言いくるめる」算段を整える。そして、赤川大膳を先頭に、天一坊、天中坊日真、藤井左京、伊賀亮を駕籠に乗せた総勢800名の大名行列で大坂城へ向かう。だが、大手門を片扉しか開けないことに対し伊賀亮が抗議すると、門番をしていた三枝金三郎に「本物か、偽物か、まだ真偽が定かではない人物に両扉を開けて入城させることはできない」と言われる。そして、伊賀亮はこの扱いを無礼だと判断し、引き揚げてしまった。

先頭にいた赤川大膳が取り残されてしまった。土岐丹後守が「天一坊の誕生、成長」について詳細を訊きたいと言うと、大膳は「書面をもって回答する」と言って、天一坊から聞いていたことを文章に認めて渡し、引き返した。このことを伊賀亮に報告すると、「書面の内容を確認するために、江戸に早馬を走らせ、きっとこの御落胤は本物ということになるだろう」と言う。果たして、吉宗の答えは「覚えあり」だった。こうして、丹後守は改めて両扉を開けて天一坊を迎え入れ、証拠の二品を検分し、「御落胤に違いない」という回答を得る。

松鯉先生。続いて天一坊一行は京都へ入る。そして、京都所司代の松野河内守も天一坊が御落胤であることを認める。そして、満を持して江戸へ入り、品川宿本陣から八山御殿に逗留する。松平出羽守宅にて老中5人が取り調べる段取りになっていたが、大岡越前守が「是非、若君様の御尊顔を拝したい」と願い出た。これ以上取り調べる人間を増やすのは無礼だと考えた出羽守は、「家来として同席するだけなら良い」と認める。

まず先頭でやって来た赤川大膳を見て、大岡越前守は「悪相だ」と思い、天一坊を疑い始める。だが、伊豆守はじめ老中の質問に対し、伊賀亮がその生誕から成長、証拠について、弁舌鮮やかに答えるため、一同は「御落胤に相違ない」と信じてしまう。天一坊は「騙し切った」と気が緩んだのであろう、ニヤリとした。その顔を大岡越前守は見逃さなかった。身分に余る大望を叶えるために、人を欺く人物に見えて仕方がなかった。

越前守は「やがては九代将軍。失礼がないように」と信じきった老中たちに「凶悪の相があります。徳川家の一大事です。もう一度、取り調べを」と願い出るが、取り合ってくれない。「万が一、真の御落胤であったときには切腹する覚悟。再調べをご命じくださいませ。命をかけて申し上げているのです」。

越前守は意を決して、翌日に将軍に直々に申し上げようと登城したが…、越前守の意に反したことが吉宗に伝わってしまい、越前守は閉門を言い渡されてしまう…。

さあ、この後に天一坊と越前守の対決はどうなるのか。この続きを聴けるのは来年のフェスになるのだろうか。「徳川天一坊」は面白い。楽しみである。