東西ラクフェス2024 二日目
「東西ラクフェス2024~東西らくご博覧会」二日目第二部に行きました。月亭太遊さんは初めて聴いたけど、面白い新作を創る方が上方にもまだまだ沢山いるのだなあ。開口一番は春風亭昇ちくさんで「鈴ヶ森」だった。
桂二葉「上燗屋」
酔っ払いも上手いし、可愛い。♬パパリコ、シャンシャン~と上機嫌で歌いながら居酒屋に入って来るところから愉しい。「あつなし、ぬるなし、ころかげん」だから、上燗屋。なのに、最初はぬるい酒が出てきて、熱くしてくれと頼むと、今度は熱い!甘酒みたいにフーフーしながら飲まなきゃならない。
酔っ払いの駄洒落も可笑しい。こんもり盛り上がって、懲戒免職。表面張力や!とか。上燗に、「上官殿!」と敬礼するとか。機嫌良く飲んでいる様子が目に浮かんで微笑ましい。
こぼれた煮豆とか、鰯のから炊きのおからだけとか、添えてある紅生姜とか、「これなんぼや?」「ただです」に乗じて、それらを肴に飲む酔っ払いがなぜか憎めない可愛らしさを感じる。鷹の爪も「好きなだけ食べていい」と言われ、口に入れて「辛い!」と飛び上がるのも愛嬌だ。酔っ払いと居酒屋の親父のやりとりに何ともいえない愛おしさがある。
春風亭昇羊「粗忽長屋」
粗忽者Aが雷門の前で行き倒れを見つけ、その“当人”である熊五郎を連れてくる。その間の熊五郎がいる長屋に行って、粗忽者Aが「お前は死んでいる」と説き伏せる部分を全面カット。舞台が雷門前のみで噺を成立させてしまう技量に感嘆した。
粗忽者Aが行き倒れを見て、「熊五郎だ!兄弟同様の付き合いをしているんだ」と断定する根拠が「縦縞の着物。好きでよく着ていた」だけというのが凄い。顔をよく見てくださいと言われるも、「見るまでもない!」。それでも見てくださいと言われて見ると、「あまり似ていない。まるで別人」と言うが、「でも、着物が何よりの証拠。間違いない!きっと熊は死んでいることに気がついていない。当人を連れてくる!」と思い込んだら人の話など聞かないところが凄い。
連れて来られた熊五郎は「行き倒れの当人です。兄ィから話は聞きました。死んだような心持ちがしないと言ったら、お前は死んだことがあるのか?と訊かれて、それもそうだなと」。行き倒れの差配人に対し、「私は死んだんですかね?死んでないと言ってください…見ないことにはわかりませんよね」。「見なくてもわかるだろう」という言葉を無視して、「見たくないけど…俺じゃありませんように…俺だ!間違いない!だって、この着物が証拠だ。死にたくなかった!」と言う熊五郎も凄かった。
月亭太遊「来て!観て!イミテイ村」
民俗学を研究している男がある村を訪れた噺。その村に残る文化・風習が大変にユニークで興味深かったのだが、よく聞いてみるとそれらの文化・風習はすべて1990年以降に自治会長のトノウエさんがでっち上げたものばかりだったという…。
酒を飲むときの掛け声「いっぷく!いっぷく!」。一気!は一鬼に繋がる、鬼は縁起が悪いので福にして、一福にしたとか。お祭りのときに踊る♬片尻ホイ!褌姿の男が片方の尻を叩くというユニークなものだが、これは「片腹痛い」を言い間違えたことに端を発するとか。
男女の縁結びの神だった夫婦岩が、男岩と女岩に分かれて心中のスポットになり、そこで生き残った人間がこの村の村民になった…、この伝説もイミテーション。一体、何がこの村の真実なのか?さっぱりわからなくなるという…。不思議な面白さを持った新作落語だった。