講談協会定席 神田山緑「四谷怪談 風車長兵衛」、そして吉原あさひと申します「青菜」「代脈」

上野広小路亭の講談協会定席に行きました。
「黒部の山賊 山賊との出会い」田辺一記/「中山安兵衛駆け付け」一龍斎貞鏡/「河村瑞賢」神田すみれ/中入り/「認知症カフェ」田辺鶴英/「四谷怪談 風車長兵衛」神田山緑
山緑先生の「風車長兵衛」。伊東喜兵衛の娘お花と深い仲になってしまった民谷伊右衛門は、喜兵衛に「本来ならば討ち首だが、お花と夫婦になれば許してやる」と迫られる。困った伊右衛門は風車長兵衛こと杉山長兵衛に相談し、女房のお岩を夜鷹に売り飛ばしてもらう。長兵衛は「伊右衛門が博奕で不正な借金を拵え、遠島になりそうだ」と嘘をつき、お岩に女中奉公と偽って夜鷹宿に二十両で売って自分の懐に入れる。
客を取ることを頑なに拒んだお岩が買い物を頼まれて宿を出たところで、伊藤喜兵衛の中間の角助に偶然出会い、自分が騙されて夜鷹宿に売られたこと、今は左門町で伊右衛門とお花が夫婦として暮らしていることを知り、悔し涙に暮れ、世を儚んで、大川に身投げ死ぬ。人に恨みがあるものか、ないものか。よくもわらわをこのような目に遭わせたな…凄まじい怨念を持って死んだのだった。
長兵衛は浅草の戸沢長屋に女房おかねと生まれたばかりの赤ん坊と三人で暮している。おかねは産後の肥立ちが悪く、寝たきり。赤ん坊が泣くのを「五月蠅い!」と怒鳴りつけながら、長兵衛は酒を飲んでいる。そこに夜鷹宿の主人の多左衛門の遣いで、富吉という男が訪ねてくる。「弟の娘」と言っていたお岩は実は民谷伊右衛門の女房だったことがばれ、主人がカンカンに怒っているという。長兵衛は露見するはずがないと言うと、「角助がお岩に洗いざらい喋ってしまった」と教えられ、「余計なことを…」と思う。早速、詫びを入れに紋付き袴に着替えて多左衛門の許へ走る。
これを聞いた女房おかねは「お岩が可哀想。うちの人は酷い」と思う。そこへ近所の婆さんがやって来る。入谷田圃で人だかりがあり、噂話が聞こえてきた、二十六歳の女性で、右の目の玉がない。その行き倒れは「おのれ、伊右衛門、お花、喜兵衛、長兵衛…」と口走っていて、住職がお経をあげると、間もなく息を引き取たという。おかねが「その人の顔はあばただったか」と訊くので、婆さんはそうだったと答える。
おかねは怖くなり、婆さんに頼んで一緒に寝てもらう。夜中、足音が遠くからしてきて、玄関の前でピタッと止まった。戸を開けるが、誰もいない。だが、やがてお岩の霊がおかねに憑りついて、勝手に喋り出す。「伊右衛門が私を夜鷹宿に売って、私は責め折檻を受け、あんな酷い目に遭った。長兵衛ほど酷い奴はいない。この恨み、晴らさずにおくべきか」。そして、赤ん坊を見て、「これかい?お前の父親ほど酷い奴はいない」と言って、赤ん坊の喉仏にかぶりつき、血が流れる。さらに両足を持って逆さにして、壁に投げつけた。そして、出刃庖丁を持って表通りに出て、口の中にそれを入れ、果てる。
そこには黒山の人だかりができる。そこへ夜鷹宿から長兵衛が帰ってきた。赤ん坊が真っ二つになっており、辺り一面血の海だ。そして、お岩が長兵衛を指差し、ヘヘヘッと高笑いする。長兵衛はその場を逃げるように走り去って行ったが、翌日には大川から長兵衛の遺体が引き揚げられたという…。先日、泉岳寺講談会で四谷怪談を四席俥読みで聴いたが、その続編ともいうべき一席を聴くことができ、大変に興味深かった。
「吉原あさひと申します」に行きました。あさひさんの毎月の勉強会に初めて行った。「洒落番頭」「青菜」「代脈」の三席。
「青菜」。旦那が植木屋にご馳走する場面、柳影、鯉のあらい、青菜、その都度に手を叩いて奥方を呼ぶというスタイルは初めて聴いた。大師匠にあたる十代目馬生師匠の音源で覚えたそうだ。隠し言葉だけでなく、旦那の用事がある度に奥方が呼ばれるというお屋敷の習慣そのものに植木屋は憧れたのだなあという思いを強くする演出だった。
酢味噌をつけて鯉のあらいを食べて、「シャキシャキして美味い」というところ。下に敷いている氷を頬張り、「この氷はよく冷えていますね」というところ。柳影も含め、美味い物を飲んだり食べたりするのは「極楽ですね」と言うところ。細部にわたって丁寧な演じ方がとても好印象な高座だった。
「代脈」。尾台良玄の弟子の銀南が蔵前の伊勢屋のお嬢様の代脈に行くときに、伝授される「医者としての威厳」を若先生銀南が必死に演じようとするのだが、どうしても俗っぽくなってしまう様子を可愛らしく表現していた。
特にお茶菓子として出る羊羹を「食べ飽きている」ように振る舞うところ。煙草を吸わないのに煙草盆から順を追って段取りし、いよいよ羊羹が出たら我慢しきれなくなって、「おひとつどうぞ」と言うように催促してしまうのが可笑しい。
それとお嬢様が放屁をすると良玄から聞いて、「あんな綺麗なお嬢様がおならをするわけない!」と言ったり、もししたら「匂いを嗅ぎたい!」と言ったり、まだまだ子供の銀南のキュートな感じがよく出ていたと思った。


