花形演芸会スペシャル

花形演芸会スペシャルに行きました。令和7年度花形演芸大賞受賞者の会だ。
「子ほめ」三遊亭歌きち/「近日息子」笑福亭生寿/「夏の医者」林家染吉/幇間芸 松廼家八好/「祐子と徹子」玉川太福・玉川みね子/「馬のす」春風亭昇也/贈賞式/中入り/「三方一両損」三遊亭歌奴/「粗忽長屋」桂二葉/「扇の的」一龍斎貞鏡/「七段目」春風亭柳枝/ヴォードヴィル 上の助空五郎
審査員の長井好弘さんの講評が的確かつコンパクトで良かった。大賞の空五郎さん、申し分ない受賞、と。癒しであり、粋である。寄席演芸に新しい可能性を広げてくれる人と絶賛。是非、寄席定席に出演してほしいと希望を述べた。
金賞の昇也師匠、「一文笛」と「百年目」と米朝生誕百年を狙った戦略を高く評価し、「油断ならない」(笑)。太福先生は浪曲界の未来を拓く人材、と。ドッシリした古典とオバカな新作で芸の幅広さを見せてくれた。柳枝師匠は「安定している」。どれをとっても間違いない、平均点が高い人と評価し、「もう少し上にいける」可能性に期待した。八好さんの最大の魅力は「声がでかい」。芸の圧、説得力があると評価。また、引き出しが多く、その組み合わせ、構成も巧みで、これからが楽しみだとした。
銀賞の貞鏡先生、直球一本、緊張感のある高座を評価した。講談界のサラブレッド、祖父、そして父の貞山の芸を継承してほしいと願った。二葉さんは「上燗屋」のアホで売り出したが、色々なキャラクターの演じ分けも良い、と。ともすると品がなくなってしまう噺を独特の愛嬌で染めていると評価した。染吉さん、珍しい上方落語で独特の世界に誘うのが良かった、と。生寿さん、「狐芝居」で芝居好きであることが伝わってきた、と。上方落語の豊かさがよく出ていたと評価した。
受賞者の挨拶も興味深い。貞鏡先生は五人の子供の「母ちゃん」として頑張った。銀賞の対象になった高座は五人目を産んで二か月後のことだったと言って、感極まり涙をこぼす場面も。二葉さんは「落語に詳しいおっちゃん」ことナガサワさんに相談して「上燗屋」を勧められた、感謝したい、と。面白い古典落語の大半は元々大阪の噺。だから、プログラムに東京の噺家のところには「落語」と書いて、上方の噺家のところには「上方落語」と書くのは、上方が本筋じゃないみたいでおかしいと訴えた。尤もである。生寿さんは「師匠が喜んでくれた」、笑福亭は落語ができないというイメージを払拭できて嬉しい、と。「狐芝居」は桂吉朝師匠が得意としていて、米朝師匠から「お前は芝居をやりすぎだ」と言われたエピソードのある噺。自分も思い切り芝居の部分を演じたことが評価されたと喜んだ。
昇也師匠は「3年連続金賞。モンドセレクションと呼んでください」と笑わせた。太福先生は「4年前に銀賞を獲って以来、金賞が取れなかった」ことを、相三味線のみね子師匠が気にかけてくれていた。それが今回金賞を獲れて、共演者であるみね子師匠が誰よりも喜んでくれたことが嬉しいと語った。柳枝師匠も3年連続金賞。残念ながら芸歴20年に達したので、「3年連続残念賞」と言って、大賞を獲れなかったことを悔しがった。そして、新しい国立演芸場の再建のめどが立っていないことに言及し、「本来、花形演芸会は国立で開催されて価値がある」と、早期の再建を強く望んだ。
空五郎さん。寄席芸人の方たちを差し置いて、大きな賞を貰えたことを恐縮しながらも、喜んでいるのが印象的だった。色物の役目は噺と噺の間の気分転換。寝ている人や携帯を鳴らしてしまった人を癒せる芸人でありたい、と。それが世界平和につながれば、とも。ヴォードヴィルで受賞できたことを誇りに思うと言った後、「この世界に引っ張ってくれた木村万里さんに感謝したい」という台詞が心に沁みた。
空五郎さんの高座。ウクレレを弾きながら、♬人生はキャバレーのようと歌う間に、トロンボーンやトランペットの口真似が入る芸当だけでもすごいのに、途中タップを踏んだり、シルクハットを自由自在に操ったり、演奏以外も芸達者だ。ブラジルで生まれた音楽ボサノバの名曲「イパネマの娘」を、自分の出身である飛騨高山の言葉で表現するセンスの良さもある。さらに飛騨の祝いの席で歌う「めでた」をギターの弾き語りで魅せたのも圧巻だったし、自分で作詞作曲したという♬寄席に行こうという歌もとても素晴らしかった。
ものすごい才能の持ち主。寄席定席に出る日が来ることを大いに期待したい。

