落語一之輔春秋三夜 第一夜「試し酒」

「落語一之輔春秋三夜 2026春」第一夜に行きました。「芋俵」「試し酒」「花見の仇討」の三席。開口一番は春風亭いっ休さんで「幇間腹」だった。

「試し酒」、ネタおろし。近江屋下男の久蔵が「五升飲めるか」、近江屋主人がある旦那と賭けをすることになり、負けると湯河原の別荘ご招待をしなければならない。主人に散財をさせてはいけないと思う久蔵の忠義心が僕は好きだ。

一升入りの大盃でまず一杯、息もつかずに一気に飲み干す。「そんなに慌てないで味わって飲め」と言われ、二杯目。「いい酒だ。こんな美味い酒を毎日飲んで、屋敷みたいなところに住んで、余程悪いことをしているに違いない」と冗談を飛ばし、「旦那、うちも明日からはこの酒にしよう。酒の方から口に飛び込んでくる」。さらに、「オラの生まれたところは丹波の山里、酒呑童子とは大の仲良しだ」、「寺子屋では隣同士で、久ちゃん!酒吞ちゃん!と呼び合う間柄だ。おふくろの又従兄弟だ」と、ユーモアたっぷりの久蔵節が冴えわたるのが愉しい。

三杯目。世の中で一番好きなものは、やっぱり酒かと訊かれ、「いや、銭だ」「田地田畑でも買うのか」「いや、貯めた銭そっくり酒を飲む」。「酒は誰が拵えたか、知っているか?」、小学校で教わると言って「唐土の儀狄だ」。時の帝に献上したら、「こんな美味いものは二度と拵えてはならないと言われた。これを飲むと身を滅ぼし、果ては国を滅ぼすと叱られた」。間尺に合わない話だと言って、「たんと飲むからいけない。オラみたいにほどほどがいい」。

さらに久蔵は都々逸を披露。雨戸叩いて、コレ酒屋さん、無理言わぬ酒ちょうだいな。水に油を落として開く、音してつぼまる尻の穴。酒は米の水、水戸様は丸に水、意見する奴は向こう見ず。久蔵、田舎者を演じているが、実はなかなか粋を知っている教養人なのかもしれない。賭けをしている二人の旦那の顔色を見ながら、自分自身は結構楽しんでいるのかもしれない。