小ゑん落語ハンダ付け 柳家小ゑん「悲しみのぐつぐつ」、そして笑二の90分!立川笑二「算段の平兵衛」

「小ゑん落語ハンダ付け~小ゑん・喬太郎二人会」に行きました。柳家小ゑん師匠が「ほっとけない娘」と「悲しみのぐつぐつ」、柳家喬太郎師匠が「鶏もつ煮込み」と「侵略指南」だった。開口一番は林家うどんさんで「子ほめ」。

小ゑん師匠の「ほっとけない娘」。一人娘のユリ、三十五歳独身を心配するお父さんが趣味を持ちなさいと渡した本が和辻哲郎「古寺巡礼」というのが可笑しい。それをきっかけに、ユリは仏像にはまり、週末には奈良や京都に行って、その神々しさに惹かれているという…。東大寺の広目天、室生寺の金剛力士像、法隆寺の釈迦三尊像、中宮寺の弥勒菩薩…次から次へと仏像の名前が出てくるところは、喬太郎師匠のウルトラマン落語と共通点があるかも。

お父さんの会社の同僚ナカムラさんの部下で“大仏”と渾名されているテラデサトル君とお見合いをしたユリはすっかり彼にご執心になる展開が面白い。父親が転勤族でインドのルンビニに生まれ、パンチパーマの頭に、大きな耳たぶ、ベンチに横になっている姿は涅槃像…。ユリとすっかり気が合って、鎌倉デートも寺巡りのフルコース…この道中付けも見事な秀作だ。

「悲しみのぐつぐつ」は、普段師匠が演じている「ぐつぐつ」に哀愁を加味した演出が奮っている。おでんを擬人化した新作落語で売れた「柳家小ゑん」が落語界を追放され廃業、今は夫婦でスーパーマーケットにおでんの屋台を曳いて廻り、落語「ぐつぐつ」を演じる高座とセットで「実演販売」しているという…。

小ゑんのぐつぐつおでん。三人前で2000円。3000円以上お買い上げのお客様には、小ゑん落語のCDのおまけが付く。おでんのネタも落語にちなんで、中毒性のある談志揚げ、スマートで人気のある志ん朝巻き、淡泊な味が魅力の小さん巻き、一度や二度ではその良さがわからないが、何度も食べるうちに渋い味の虜になる彦六揚げ…。人気者ばかりを集めた「鈴本パック」もあるというのが可笑しい。

この噺の中ではタコの足とイカの足の喧嘩とか、田舎者のイモが「俺は故郷では男爵と呼ばれている。メークインという恋人もいる」とか、大根さんがお玉でざっくり切られて醤油が滲みるとか、従来の「ぐつぐつ」を包括する形で出て来て、それはそれで面白いのだが、それ以上に廃業しておでんを売り歩いている「柳家小ゑん」の悲哀がとても良い。

売れ残ったおでんの入った屋台を曳いて、イトーヨーカ堂を去り、「明日は西友だ」と言いながら、小ゑんが女房に「苦労をかけるなあ」。女房は「私はこのおでんが大好きだよ」と応え、屋台のおでんたちも「泣くなー!俺たちがついているぞー!頑張れー!」と励ます。幸せのおでんの屋台が夜の闇に消えていく描写が素敵だった。

「笑二の90分!~立川笑二蔵出し勉強会」に行きました。「突き落とし」「猫忠」「算段の平兵衛」の三席。

「算段の平兵衛」、よく出来ていて面白い。呉服商の近江屋善兵衛は煙草屋の裏手にお花を妾に囲っている。その情報を平兵衛が近江屋の女将に密告したことから事は始まる。「私に任せてください。町内に言いふらします」と言う平兵衛に、世間体を気にする女将は「ここだけの話にしておくれ」と一両を渡す。

店に帰って来た善兵衛に対し、女将は「お花とできているんだってね」と切り出し、善兵衛が「別れるから許してくれ」と言っても、女将は「町内から追い出してください」。困った善兵衛は平兵衛に相談すると、平兵衛は「お花に所帯を持たせたらいい」と助言。善兵衛は平兵衛に対し、「三両でお花を貰ってくれないか」。平兵衛は嫌がるふりをして値を上げ、結局十両で夫婦になることにした。

お花を女房に迎えた平兵衛は相変わらず遊んで暮らし、博奕にまで手を出して、一文無しになってしまう。そこで考えたのが美人局。お花が善兵衛を相談に乗ってほしいと家に上げ、色仕掛けで迫り、善兵衛がお花の手を取ったところで、隠れていた平兵衛が出てきて「間男、見つけた!」。「いくら出すんだ!」と散々に殴り倒すと、何と善兵衛は死んでしまった…。

そこで平兵衛は善兵衛の死骸を背負い、近江屋へ。善兵衛の声色で「俺だよ。開けておくれ」と戸を叩くも、女将は「まだ、お花のところに行っていたのか」と機嫌を損ねて開けてくれない。「店から閉め出されたら世間体が悪い、首を括らなきゃいけない」と言うと、女将は「括ればいいでしょ」。平兵衛は「しめた!」とばかりに、庭の松の木に善兵衛をぶら提げる。様子を見にきた女将は亭主が首を本当に括って死んでいるのを見て、ビックリ!平兵衛さんに相談だ…。

何とかしてくれと二十五両を渡された平兵衛は善兵衛の死骸に派手な浴衣を着せて、手拭いでほっかむりをさせ、背負う。町内の若い衆が盆踊りの稽古をしているところに暗闇を利用して紛れ込み、冷たい手を連中の顔につける。「隣町の奴が邪魔しにきたな!」と、袋叩きにしてしまった。でも、提灯を近づけて見ると、「近江屋の旦那を殺してしまった!」。二十五両を持って、平兵衛に何とかしてくれと頼みにいく…。

平兵衛は町内の若い衆に橋で酒盛りをしろと指示。そこに女将を連れてくる。若い衆が「酔った旦那が橋から落ちそうだぞ!」。ドボン!という音とともに、善兵衛の死骸は川の中へ。もう、何が死因なのか判らない。役人が取り調べたが、事故扱いになったという…。

元々は平兵衛が仕掛けた悪事だが、それが廻り廻って、平兵衛は金儲けをしてしまう。平兵衛の「算段」が「算段」を呼び、最終的に「算段」がついてしまう面白い噺である。