喬太郎・白酒withタブレット純 桃月庵白酒「幾代餅」、そして文楽「国性爺合戦」

「喬太郎・白酒withタブレット純」に行きました。柳家喬太郎師匠が「えーっとここは」、桃月庵白酒師匠が「幾代餅」。ムード歌謡漫談のタブレット純先生に加えて、ゲストで漫才のロケット団先生が出演した。

白酒師匠の「幾代餅」、爆笑編が気持ち良い。清蔵が「笑わない約束」で恋煩いを告白したのに、親方と女将さんがどちらも腹を抱えて、涙を流して大笑いする。一年後に清蔵が13両2分貯めて幾代太夫に会わせてくれと言ったときにも、親方はまた大笑いして、「一年経っても色褪せないなあ」と言うところも含めて滑稽噺だ。

白酒師匠独自のクスグリで、幾代太夫のことばかり考えすぎて、モノの区別ができなくなってしまうところ。「どっちが砂糖で、どっちが塩か」、「どっちが茉奈で、どっちが佳奈か」、「どっちが茂で、どっちが猛か」。あだち充の漫画にいたっては登場人物が皆同じに見える…。何度聴いても笑える、センスが光るクスグリだ。

清蔵が「幾代太夫に会える」と判ると、それまでの弱々しい声から、いきなりバリトンの男前の声になる演出があるが、今回はこれをタブレット純バージョンでやって、はまっていたのが面白かった。

そして、幾代太夫が清蔵の正直に惚れて、「女房はんにしてくんなますか」と訊くが、清蔵がパニックに陥り、「くんなます」を連発するのも可笑しい。そして、親方の許に帰ってきても、「来年三月は何月に来るのか」と訳のわからないことを言って、後はスティービー・ワンダー風に「シャンガチ」を繰り返し、挙句に「ワンダフル」!(笑)親方が「まともな人間を一人駄目にしちまった」と言うのも判る。親方が「三月」と呼ぶと、清蔵が男前に戻って「へい!」と正気に戻るという…。

そして、来年三月。幾代太夫がやって来て、小僧も「来ました!三月!」、親方も「三月か!大変だ!」と店中がパニックになると、逆に清蔵だけが男前で落ち着いているというのも面白かった。

大人のための文楽入門に行きました。

万才/文楽の魅力/国性爺合戦 楼門の段~甘輝館の段~紅流しより獅子が城の段

錦祥女が「一生に一度の親孝行」のために命を投げ出す物語だ。実父の老一官は明国復興のために息子の和藤内と後妻を連れて中国に渡る。そして、娘の錦祥女を頼って、夫である韃靼に仕える名将・五常軍甘輝を味方につけたいと考えて獅子が城を訪ねる。久しぶりの父との再会を喜ぶ錦祥女が印象的だ。形見として肌身離さず持っていた父の絵姿と手鏡に映した老一官を見比べ、確かに父に違いないと確信し、嬉し涙にくれる。

だが、和藤内一行に夫である甘輝を味方につけるという父の願いを叶えるのは一筋縄ではいかなかった。まず、韃靼の掟で父や和藤内の入場が許されない。義母だけが縄に縛られ入場した。さらに甘輝が帰って来て父の願いを訴えると、味方につくには条件があるという。甘輝は韃靼王から和藤内征伐を命じられており、妻の縁で和藤内に寝返ったと思われては武士の恥になる。だから、妻を殺した上で味方につくというのだ。ああ、何ということだ。

錦祥女は進んで自らの命を絶とうとする。それを義母が「義理の娘を見殺しにできない」と必死に止める。甘輝はその姿を見て、涙にくれ、和藤内の味方にはなれないと決断する。そのことを知った和藤内は獅子が城に乗り込み、甘輝を激しく非難する。だが、甘輝も心を変えない。

二人の対立を見た錦祥女が中に割って入る。実は錦祥女はすでに懐剣を自分の体に刺していたのだった…。この強い願いを受け入れ、甘輝は和藤内に頭を下げて大将軍と仰ぐ。結局、錦祥女が犠牲になって、和藤内と甘輝が徒党を組んで明国復興を目指してともに戦うことになった。

もう一つ悲しいのは、錦祥女だけを犠牲にできないと老一官妻も喉を突いて自害したことだ。義理の娘ではあるけれど、いや、義理の娘だからこそ、一緒にあの世に逝こうと決意したのか。悲しい物語である。

楼門の段 豊竹芳穂太夫・鶴澤清志郎/甘輝館の段 豊竹呂勢太夫・鶴澤藤蔵/紅流しより獅子が城の段 豊竹靖太夫・鶴澤清丈

鄭芝龍老一官:桐竹紋臣 老一官妻:吉田蓑二郎 和藤内:吉田玉佳 錦祥女:吉田蓑紫郎 五常軍甘輝:吉田玉助